シェア

日本最大級の「巨大ネット遊具」を造った富山県の建設会社とは?

京王あそびの森 HUGHUG

京王あそびの森 HUGHUG

5月5日は、こどもの日。幼いころに公園で「縄ばしご」や「網」を使う遊具で遊んだ経験がある人も多いだろう。

では、全国のネット遊具の半数以上を手掛けるメーカーが、実は富山県の建設会社であることをご存じだろうか。

多摩動物公園前に国内最大級のネット遊具

東京都日野市の京王線・多摩動物公園駅の隣に、3月に開業した「京王あそびの森 HUGHUG(ハグハグ)」。

ファミリー向けの大型遊戯施設で「知育」「体育」「木育(もくいく)」の3要素をコンセプトに体験型のアトラクションをそろえている。

施設の目玉は高さ約12メートル、幅約15メートルのネット遊具の巨大なツリーだ。京王電鉄によると、単体のネット遊具としては国内最大級という。

京王あそびの森 HUGHUG

巨大ツリー/京王あそびの森 HUGHUG

京王電鉄の担当者は「メーカーの方とは安全性なども含めて高さを出すため、どう工夫するのか何度も打ち合わせてクリアしました。子供たちには自由な発想で楽しんでほしいです」と期待を寄せる。

施工したのは、富山県南砺市の建設会社・株式会社岡部の公園施設部である。

ネット遊具の5割が岡部

岡部は昭和18(1943)年に創業。主に富山県内の河川や道路、電力関係といった土木・建築事業を担ってきた。

戦後、社会の経済成長に伴って公園の造成工事が増える中、海外視察をきっかけに事業の多角化を目指すことに。昭和40年代後半に海外製遊具の輸入・設置や遊具の製造を始めたという。

当初は公園等の屋外遊具が多く、全国各地で大型遊具を設計・製作し、日本宝くじ協会の助成金事業の大型の遊具も数多く設置しました。

ネットは、一部のアイテムとして昇降(はしごの代わり)や吊り橋のような小さな面積の物を取り付けていたのですが、一部に大きな面積のネットフロアを取り入れた遊具が好評を得たのがきっかけで、ネット遊具に注力しはじめました。

現在では、ネットフロアがメインの遊具を全国各地の公園をはじめ、幼保こども園、子育て支援施設、商業施設等の内外で設置するようになりました。(岡部の担当者)

兵庫県尼崎市の尼崎スポーツ健康の森(平成18年)提供:岡部

兵庫県尼崎市の尼崎スポーツ健康の森(平成18年)提供:株式会社岡部

昭和55(1980)年に東京支店を開設すると、多くの設計会社から依頼が舞い込むようになった。同年に発足した「日本公園施設業協会」には創成期から参画し、現在も中心的役割を担っている。

全国的なシェアは定かではありませんが、施工件数、施工面積では50%を超えているのではと自負しています。

弊社内では、ほとんどの遊具に少なからずネット遊具部分があり、80%以上の遊具にネットを盛り込んでいます。

独自性に富んだ楽しい遊具造り

岡部は、特注遊具に特化している。ネット遊具は形作りの自由度が高く、走ったり跳ねたりする遊びを通じて子どもの「全身運動、バランス感覚を養うにはもってこいの遊具」という。

ネット遊具に限らず、発注者の要望に応えることを念頭に、安全性・耐久性・信頼性・機能性を兼ね備え、独自性に富んだ楽しい遊具造りを心がけています。

日本公園施設業協会の規準に準拠した設計・施工を行い、子供が予測できない危険(ハザード)を除去し、冒険心・挑戦心(リスク)を養える遊びの価値の高い遊具造りを目指しています。

東京都足立区 足立ギャラクシティー (平成25年)提供:岡部

東京都足立区の文化ホール「ギャラクシティ」(平成25年)提供:株式会社岡部

同社の強みとして、安全性へのこだわりとネットの豊富なカラーバリエーションを挙げる。

ネット遊具は子どもの動きが大きく不安定になりやすいので、動線や開口位置については細心の注意で設計施工し、衝突防止や、落下防止対策を施しています。

ネットのサイズも用途に応じて数種類用意していますが、中でも床用メインネットは他社にはない5 色を用意しています。「あれはなんだろう?」「またあの遊具で遊びたい!!」と思ってもらえる遊具造りを行っています。

フジテレビ お台場合衆国 サウザンドサニー号 (平成23年)提供:岡部

東京都・フジテレビお台場合衆国でのサウザンドサニー号 (平成23年)提供:株式会社岡部

子供たちの楽しい姿を思い浮かべて

話を戻し、冒頭の「京王あそびの森 HUGHUG」の開業に先立って行われた内覧会。子供たちは4層に分かれた巨大なツリー内の仕掛けや、天井から吊り下げた「雲」を遊び回っていた。

特注遊具メーカーである岡部はまったく同じ遊具を造ることがなく、毎回異なる試みを求められる。

今回のツリーでは4層のうち、2 ・3 層目が中心部の柱を除いてワイヤーのみで支えられている。まさに樹木のような構造は、地道かつ緻密な技術の結晶だ。

京王あそびの森 HUGHUG

京王あそびの森 HUGHUG

ネットで表現した「雲」/京王あそびの森 HUGHUG

ネットで表現した「雲」/京王あそびの森 HUGHUG

この部分の形状は、ネットの張りをうまく保つことがポイントでした。模型や3Dキャド等でシミュレーションを行い、現場でも様々な準備を経て施工に臨みました。

雲のチューブ部分は、足場の撤去後は手直しが難しい場所なので、細心の注意払って作業しました。雲の装飾ネットは、顧客とともにいろんな角度から検討し、皆様に雲だと思ってもらえる仕上がりになりました。

出来上がった遊具を見上げた時には、達成感とともに、子供たちが“おっかなびっくり”しつつも、楽しく遊ぶ姿が思い浮かびました。

京王あそびの森 HUGHUG

巨大ツリーの中で遊ぶ子供たち/京王あそびの森 HUGHUG

施設全般の設計・デザインを担ったディスプレイ施工大手の丹青社の担当者も、岡部に厚い信頼を寄せる。

今回の案件では、施設のデザインテーマとして多摩の森をイメージしてます。

施設のメインとなるネット遊具は、森で神木のようにそびえたつ遊具として位置づけ、吹き抜けを利用して三角錐の形状で巨大な樹として体現、木の中で思い切り遊べるシンボルツリーとして表現しています。

岡部さんなら遊具そのものだけではなく、施設全体の中で1つのシーンや個性、楽しみを一緒につくっていく上で既成概念にとらわれない柔軟な対応ができると確信して、パートナーとなって頂きました。

(足立区の)ギャラクシティなど様々な岡部さんの実績もありますが、どれもみなネットというアイテムで何かを表現する姿勢や意図が、非常にわかりやすく共感を覚えたのも大きな理由の一つです。(丹青社)

きょうも全国で子供たちが公園の遊具で体を動かしているだろう。

ネット遊具には、子供たちが安全かつ楽しく遊べるよう情熱と知恵が張り巡らされていた。

関連タグ:

Posted: |Updated:

Text by 漆舘たくみ

Ranking

All Categorys Ranking総合ランキング