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これがズッこけたら立ち直れない…3億本出荷の大ヒット商品「本麒麟」を生んだ開発者の覚悟

中村壮作さん 提供:キリンビール

中村壮作さん 提供:キリンビール

商品棚で金色と赤色が輝くパッケージがひときわ目を引く。

キリンビールが2018年3月に出した「本麒麟」が空前のヒットを記録している。

1年経たずに累計3億本を出荷

本麒麟は「新ジャンル」(いわゆる第三のビール)と呼ばれるアルコール飲料だ。

一般的に値段が高い本物のビールの代用品といった印象が強い区分だが、本麒麟はビールに期待される「力強いコクと飲み応え」を持った本格的な旨さが好評を博す。

発売から1年を経ずして累計3億本を出荷。過去10年間のキリンビールの新製品では、トップの売上をたたき出した。

2018年を代表するヒット商品の開発を担ったのは、同社商品開発研究所の中村壮作さん、そしてビール類の“味の番人”である同社マスターブリュワーの田山智広さん。

大ヒット商品を生んだ横浜市鶴見区のキリンビール横浜工場で、2人に本麒麟への思いを語ってもらった。

本麒麟=2019年1月28日撮影

本麒麟=2019年1月28日撮影

当初はビール好きを想定

「新ジャンル」は酒税法の区分上、ビールに比べ原料に制約がある。本麒麟は、その中でどういう原料なら本格的なラガービ―ルに近づけるかを試行錯誤をした商品だ。

鍵となるホップには、他でもあまり使用されていないという「ドイツ産ヘルスブルッカーホップ」を用いている。

中山さんはターゲット層には当初、日常的にお酒を飲むビール好きを想定していたと振り返る。

本麒麟では、ラガービールらしい「骨格」を維持しつつ飲みやすいものを狙いました。

ビール類を飲まない人からも「飲みやすい」という評価をもらったのは予想外でしたが、そういう味の骨格がちゃんと伝わってくれたと思います。

メインカラーにキリンの定番商品では珍しい「赤」を採用した。田山さんが狙いを語る。

赤には、ビール好きの人でも満足できるようにしたいという「情熱と覚悟」の意味を込めています。もともとキリンと赤は相性がいいんですよ、コーポレートのマークも赤色ですから。

「本麒麟」というネーミング自体が不退転の覚悟を表しています。いくら中味が良くても買ってもらえなきゃ意味がないので、お客さんに思いが伝わってほしいと考えました。ブラッシュアップして直球で分かりやすいものにしました。

キリンビール横浜工場入口=2019年1月28日

キリンビール横浜工場入口=2019年1月28日

売れ行きを聞いて「ほっとした」

中村さんは研究所で5年余り、いくつもの新製品開発に取り組んできた。ひたむきにつくり込んでも「多くのお客様に届かなかった」という商品も少なくなかった。

本麒麟では、社名を強調した名前とのギャップをなくすことを第一に考えたという。

結構なプレッシャーを感じていましたね。

これでもう1回ズッこけたら自分は立ち直れない、成功させなければいけないと。

ここでキリンビールのすべての試験醸造を行う=2019年1月28日、キリンビール横浜工場

キリンビールのパイロットプラント、本麒麟の開発もここで行われた=2019年1月28日

パイロットプラントでの試験醸造を経て、量産化のための研究を進める。満を持して2018年3月13日の発売日を迎えた。

中村さんの不安は杞憂に終わった。

発売初月の販売実績で当初の目標の1.5倍超え。売れ行きは予想をはるかに超え、一時は店頭から消えるほどの人気を博した。

売れたと聞いたときは、ほっとして胸をなで下ろしました。プレッシャーから解放された感じです。

品薄になった点は本当にお客様にご迷惑をおかけしましたが、ご好評いただけたことが有難かったです。

中村さん(左)と田山さん=2019年1月28日、キリンビール横浜工場

中村さん(左)と田山さん=2019年1月28日、キリンビール横浜工場

売れているのにリニューアル?

2019年1月から、本麒麟は「新」を頭につけてリニューアルした。

飲み応えを強化しつつ後味をよりきれいに。本麒麟の特長を伸ばして商品イメージの先鋭化を図る。

2019年は1380万ケース(大びん換算)の販売を目指す。

今回のリニューアルで飲み応えを改良し、満足感が少しばかり進化しています。

そして、爽快な飲み心地で後に残らない。さっと切れてまた次が飲みたくなる。日常的に飲みたくなる飲みやすさを目指しました。(田山さん)

今年10月に予定される消費税10%への増税を前に、消費者の節約志向が高まっている。飲料メーカー各社は、手頃な価格でかつ高品質の商品開発にしのぎを削る。

同社が掲げる“クラフトマンシップ”を胸に、中村さんと田山さんの戦いが続いていく。

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Text by 漆舘卓海

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