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もう天気の話はしない!営業先で印象に残る「アイスブレイク」のコツとは

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

「きょうは暑いですねえ」

毎日のように様々な人と知り合うビジネスの現場。初対面の相手と会話を始める口火に、時候の挨拶のように天気の話題を用いる人も多いでしょう。

一般的なやり取りとはいえ、定番中の会話術。

「第一印象を決めるチャンスは1回しかない。天気の話をする時間はもったいない」

そう力説するのは、BtoBの営業領域で「デジタル革命」を起こすそうとMAツール「マーケロボ」を開発・運営するMarketing-Robotics株式会社(東京都港区六本木)の田中亮大社長(33)です。

ライターのくせに話し始めが苦手な筆者に、テンプレートの会話術に依存しない「アイスブレイク」のコツを聞きてみました。

第一印象が決まる5分間をどう使う?

田中:まず、世の中の多くの人が会話の初めに「アイスブレイク」ではなく「アイスメイキング」をしています。

天気の話とか、この辺お昼はどこに行くんですかとか、そういう話はみんなします。場の空気が凍ります。もし相手が社長なら1日5回くらいは同じ会話をしています。さすがに飽きますよね。

ネットの調べたとしても、効果的なアイスブレイクはないなと思います。「男の褒めるさしすせそ」みたいなのがあるでしょう。さすがですね~、知らなかったです~、すご~い、センス良いですね~、そうなんですか~!みたいなの。非常に薄いです。そういう表面的なものばかりで、本質的なものは少ないなと思います。

商談やビジネスの会話って大体約1時間くらいだと思います。アイスブレイクが5分ぐらいあって、前置きがあって、インタビューやプレゼンテーションがあって、その後に契約手続きをするとか、割合で言うとアイスブレイクは非常に短いですよね。

ただ、質問の練習とか反論処理とかを一所懸命に準備するビジネスマンやマニュアル化している会社は多いと思うんですけど、たった最初の5分間の名刺交換やアイスブレイクを、命を懸けてやるというビジネスマンやチームは日本ではなかなか会ったことがないです。

でも、第一印象を与える機会は1回しかないので、それに力を注がないのはもったいないです。

「はじめまして」の時の相手側の心理というのは、何かを売り込まれるんじゃないか、どうせ一方的な営業じゃないか、もう不信感、不安感、拒否感しかないんですよ。これを柔らかくするのが、「アイスブレイク」です。

天気の話で柔らかくするのは、厳しいかなあと思いますよね。

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

私は「相手が自発的に気持ち良くしゃべり出してもらう状態にすること」がアイスブレイクだと思います。

アイスブレイクの目的を尋ねると、半分くらいの割合の人が「自分の話を聞いてもらうようにするため」と答えます。

もちろん最終的にはそうなんだけど、それは自分の話が刺さるようにする前段階として聞き取りをしますよね。アイスブレイクはそのヒアリングのためのものです。

向こうがしゃべり出すスイッチを探し出す。相手の中にしかないから、天気の話には絶対にないです。

しゃべってもらうことが大事なんです。極論、何を聞いてもいい。「しゃべった」という事実が大事です。

なぜなら、人は話した事実は覚えていたかも話した内容まではなかなか覚えていないんです。1時間前に話した内容をはっきり覚えていることなんてめったにないです。

アイスブレイクを4段階に分けられますね。

1、ひとつは「自分が何者か」という自己紹介をする必要があります。60秒くらい、いわゆるエレベーターピッチですね。

2、次に「なぜあなたに会いたかったか」を伝えましょう。

3、「どれくらいあなたに会いたかったか」を伝えます。

4、最後は「あなたのために、きょうは何をしに来たのか」という目的の共有。

ここまでが5分くらい。天気の話と何が違うのか。自己紹介以外、全部相手のことを話しているんですんよね。

1、自分は何者か

最初の自己紹介では、60秒くらいで何文字くらいしゃべれるでしょうか

だいたい350字くらいです。原稿用紙1枚分以下です。これくらいは用意できるはず。1分間の自己紹介というのをすらすらと言える状態をつくっておくというのが、アイスブレイクをする上で大事です。

私たちは何をやっています、こんな課題があるからです、それをこうやって解決しています、そしたらこんな良い社会になりますというテンプレートがあれば、いやらしくない自己紹介になるかなと。

ビジネスの場というのは、何か意図を持った人が行くわけです。最終的に仲良くなることはあっても、最初の立場のパワーバランスでいうと、どちらかというとお願いをしに行くこちらのほうが下ですよね。向こうのほうが「話を聞いてやるぞ」状態のほうが多いじゃないですか。

「で、きょうは何の話?」っていうのが一番怖いんですよね。そして、会社のパンフレットの紹介が始まるのが典型的なビジネスの会話。多くの人が、こんな会話をずっとしてしまうのかなあと思います。

もし最初で間違って天気の話をしても、1分の自己紹介を用意しておけば、いつもフローに入れますよね。

2、なぜあなたに会いたかったのか

2つ目、私が「感動トーク」と呼ぶ部分です。「なぜあなたに会いたかったか」を伝えなければなりません。

人は誰でも承認欲求があります。自分だけに会いたかったという特別感、選ばれた感が、あなただけである理由を強く伝えることで、心の距離をぐっと縮めることができます。

誰かからの紹介であれば、紹介者が褒めていたとか、ホームページや記事を読んで拝見したよとか。ポイントは「あなた」と言う言葉を連発しましょう。人は自分のことを好きな人を好いてくれます。

多くの人は他者に認められたら心を開きます。だから相手を認めるところから始めるといいです。その場においては相手と自分しかいないわけです。そこでランチのお店とかはどうでもよくて、目の前にいる人と自分、これ以外の主語の会話を出すことは時間の浪費です。

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

3、どれくらい会いたかったか

お会いして心から嬉しいと、伝えればいいだけです。めちゃくちゃ会いたかったですと最初に言います。プレゼンの途中で言い始めるよりも最初です。

反論処理のロールプレイングするより、特別感や共通意識を持てるアイスブレイクのロールプレイングをしたほうがいいですね。

共通点でいえば、出身地が一緒とか、大学が一緒とか、自分が同い年の時に何をしていたとか具体的な共通点や相手の関心事を見つけるといいですね。事実や数字といった具体性が大事です。

よく相手の話を聞こうと言いますね。もちろんそれもいいんだけど、結局、時間が掛かりますよね。たとえば異性とのデートなら3~4回会えるけど、ビジネスはきょう何とかする必要があるわけです。

インタビュー取材なんて、そうでしょう? ずっとアイスブレイクじゃないですか。

どれくらい好きで、誰より好きで、あなた以外に目に入らないことを伝えるかが大事です。

イメージ画像/AdobeStock

イメージ画像/AdobeStock

これを口だけでやると、かなりのスキルが要ります。

どうやったら伝えられるか、言うんじゃなくて見せればいいんだ。

本気度を示します口だけでなく、手書きで伝えます。相手の視覚に訴えたほうがいいです。

ホームページに書いてあること、大きな文字でノートに書きます。事前に短い時間で書き上げましょう。15分で書き終わります。

もしノートでぜんぶ手描きしたら印象に残りますよね。デザインとか凝りたくなっても我慢。ここに聞きたいことを書いておけば、当日のカンニングペーパーにもなりますよね。

あなたに本当に会いたかったんです、調べられることはぜんぶ調べてきました。だから、きょうホームページとか書かれていないことを聞かせてください。

客先であれば先に応接室などに通されて、相手の方をお待ちする形になると思います。そこで机に広げておくんですね。

そうすると、相手の方が入室して机の上にノートがあって「これなんですか?」と言って勝手にアイスブレイクが始まります。

やりすぎじゃないかと思うかもしれませんが1回やってみてください。インタビューでも、会社のHPをぜんぶ印刷してくるインタビュアーの方がいらっしゃいますよ。

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

4、きょうは何をしに来たのか

ただ、ここまでやるとデメリットもあります。アイスブレイクをしすぎると、話がまとまらなくってしまうんですよ。

最後に何か売りたいとか提携したいとか考えているのに、めちゃくちゃ会いたかったし、調べてきましたと。

いよいよ商談に入りますよと、これから本番ですよと相手にも分かるように、ちゃんと目的を明確にして共有する必要があります。

アイスブレイクで、なんとなく時間が過ぎてしまう。ちゃんと営業に来たっていうことを最初の段階ではっきり伝えておく必要がある。

もし弊社のサービスが役立つようであれば、社長にも喜んでいただきたいので、ぜひ契約していただきたいと思ってきました、と言い切らないとだめです。

何より個人的にお話を聞きたいことがあって、少しだけ聞いていいですかとトークをすることで、最後はただの雑談に来たわけでないと目的を共有することが大事です。

御社と事業提携に来たんですけど、表面的なことだけなじゃなくて、今後も仕事も密に付き合っていくことになるので、単純に個人的にどんな方かすごく知りたいんです、と一言を付け加えるだけで全然違います。

アイスブレイクが重要なわけ

プレゼンの温度感っておおむね徐々に盛り上げていったりして、最後にバーン!と盛り上がるようにします。

いい感じに見えますけど、欠点があります。人は盛り上がると次は冷静になっていくんですね。人の感情はそういう風にできています。

最終的に盛り上がるということは終わった後に「あれ、私は契約して良かったのかな?」と冷静になってしまう。そうすると、キャンセルになってしまったり、次に会った時に契約してくれなかったりするんですね。

じゃあ、ベストなのは最初に盛り上げて最後に盛り下げる。すると、アイスブレイクが本当に大事なんです。最初に比べて盛り下がった状態で終えるというのがとても大事なんです。

これは採用とか、何にでも使えると思います。最初のボタンの掛け違いを起こさないためにもアイスブレイクに全部かかっているんです。

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

Marketing-Roboticsの田中亮大社長

根性を発揮するところを間違えないで

営業の仕事って根性論に陥りがちかなと思うんですが、根性なんか要らないです。厳密に言うと根性は要りますけど、違ったところに根性を発揮するのがいいかなと思います。

うちの会社は「マーケティングオートメーション」をデジタルツールとして売っていますけど、質の高いのコミュニケーションをするために、予定調整とか省ける部分はツールで省きましょうというのが狙いです。

今はテレアポをしまくって、はい商談となった時にはみんな疲れ果てているんですよ。戦で言ったら、傷だらけの戦士状態。それで相手のところに出向くよりなら、体力を温存していきたいよねというのが、私の考えです。そこまではツールでできたらいいよねと。

営業の極意は、相手に対する尊敬、本当に相手のことを真正面から人としてみて興味を持つ。表面的なものではなく、その人の内面とか、その人がどういう人生を歩んできたのかとか、その人自身に興味を持つことが大事だと思います。そういう部分に力を入れられるようにしたいですよね。

取材後記

約1時間のインタビューで、常に話を盛り上げようと筆者に気遣いをしてくれた田中さん。

日々の仕事ではつい目先の数値目標を追い求めてしまいがちですが、営業職であれ、ライター職であれ、人間関係を築く上で非常に基本的なことを忘れない姿勢の重要性を再認識させてくれました。

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Text by 漆舘たくみ

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