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「700人の村が成功すれば全国の町村の希望になる」山梨の過疎村に空き家を改装したホテルが開業

小菅源流の村の客室=2019年8月17日撮影

小菅源流の村の客室=2019年8月17日撮影

東京都心から車で約2時間、山梨県北都留郡の山あいにある小菅(こすげ)村。

人口約700人、山手線の内側と同じくらいの面積の95%を森林が占めるこの村に、8月17日、大きな古民家を改築したホテル・レストラン「NIPPONIA 小菅 源流の村」が開業した。

コンセプトは「700人の村が一つのホテルに。」。地域に根付く新しい形のホテルとして注目を集める「分散型ホテル」で、今回の開業はその第1期となる。

分散型ホテルで空き家を資源に

小菅源流の村外観 提供:株式会社EDGE

小菅源流の村外観 提供:株式会社EDGE

建物は築150年超の地元名士の細川家の邸宅を改修。部屋数はわずか計4室、レストランは22席。屋号である「大屋」にちなみに、OHYA棟と名付けた。

788平方メートルという広い敷地に、養蚕の歴史を語る高く太い梁を持つ母屋、長屋門と蔵、そして家主が思いを込めた美しい日本庭園が構える。

小菅源流の村の客室=2019年8月17日撮影

小菅源流の村の客室=2019年8月17日撮影

小菅源流の村=2019年8月17日撮影

小菅源流の村=2019年8月17日撮影

スタッフは全員が村民で、食材もほとんどが小菅村の農作物を用いるこだわりぶり。

電動アシスト自転車も備えており、自転車で村全体を巡って村人と触れ合うことで、宿泊者が「村人」となり、村全体を感じられる体験を演出する。

小菅源流の村の地元食材による料理=2019年8月17日撮影

小菅源流の村の地元食材による料理=2019年8月17日撮影

2020年5月には、新たに古民家2棟を改修して客室2室が加える予定だ。

将来的に村の中に70~100棟ほどあると言われている空き家の中から、特徴的で立地が良い物件を順次改修していき、「村が一つ」のコンセプトの実現を目指す。

観光客増加するも宿泊施設は不足

全国の地方自治体の御多分に漏れず、小菅村も過疎・高齢化が進行している。村からはどんどん近隣の市部へ人が流出し、空き家が増えていった。

この悪い流れを食い止めようと、村は地方創生総合戦略を策定。道の駅や地域おこし専門の会社の設立などに取り組んできた。

その結果、直近5年間(2014年~2018年)で観光客数は、約8万人から約18万人へと約2.2倍に増加。22世帯75人の子育て世代が移住し、村内の小学校の児童数は23人から36人に増えたという。

企業が新たに5社できるなど、地方創生の成功モデルとして注目を集める。

小菅村 提供:株式会社EDGE

小菅村 提供:株式会社EDGE

しかし、村内の既存の民宿などが経営者の高齢化といった理由で廃業が相次ぎ、村の受け入れ容量が不足。観光の産業化のボトルネックになっていたという。

そんな中、古民家を所有する細川家から「人が住んでいない状態では家が荒れてしまう」と、空き家の活用について村に相談があった。細川家は村の旧家のひとつで、格式ある邸宅がこのまま朽ちていくのはしのびないという。

ちょうど2018年6月に改正旅館業法が施行。地域に点在する施設を、まとめて一つのホテルとして営業許可を得られるようなった。

そこで小菅村と、道の駅運営で関わりがあった株式会社さとゆめの嶋田俊平社長が協力し、ホテル運営を行う新会社EDGE(嶋田社長)を設立。「NIPPONIA 小菅 源流の村」のグランドオープンにこぎ着けた。

全国の町村の希望になる

8月17日に開かれた内覧会では、関係者や地元の人々が集まり古民家の新しい門出を祝った。地元の複数のテレビ局を含めて多くのメディアが取材に訪れ、注目度の高さがうかがえた。

小菅村の舩木(ふなき)直美村長は、IRORIOの取材に「人口700人の小さいこの村が成功すれば、全国の町村の希望になる」と力を込めた。

古民家を貸し出した細川家の現当主は「自分が帰ってくる家じゃなくなったのは、正直ちょっとさみしいけど」と笑いつつ、「村の発展のために役に立てばうれしいよね」と語った。

小菅源流の村の前=2019年8月17日撮影

小菅源流の村の前=2019年8月17日撮影

日差しが照りつける夏の日だったが、会場には時折、山の涼しい風が吹く。

筆者自身も東北の田舎の出身だが、単に東京の近くだからというだけでは言い表せない、地域として結束力を感じた取材だった。

【NIPPONIA小菅 源流の村「OHYA棟(細川邸)」】
所在地:山梨県北都留郡小菅村3155-1
電話番号:042-887-9210
定員:2棟4室計10名。
料金:1泊夕朝食付きで1人2万5000円から。
アクセス:都心部から車で約2時間
JR中央本線・大月駅からバスで1時間
JR青梅線・奥多摩駅からバスで1時間
青梅ICから車で約70分
奥多摩湖から車で約20分
※大月駅からの送迎サービスあり

Posted: |Updated:

Text by 漆舘たくみ

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