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奴隷は古代のスマホだった!?ちょっと意外な帝政ローマ奴隷事情

Flickr_Fotografia Artistica

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現代も比喩的に用いられる「奴隷」という言葉。何の見返りもなく苦役を課せられ、主人の気まぐれで時に虐待もされる者といった、重く暗い印象がぬぐえない。が、奴隷制が存在したローマ帝国での実情はやや異なるものだったようだ。

時に賃金労働者より恵まれていた奴隷

「古代の奴隷労働を、『アンクル・トムの小屋』のアメリカ大農場でのようなものと想像してはなりません」とカリフォルニア大学バークレー校教授の古代史研究者スザンナ・エルム氏は語る。「奴隷労働が賃金労働より恵まれていたこともしばしばでした」。

例えば北アフリカで年毎に行われたブドウやオリーブの収穫は重労働だったが、奴隷ではなく賃金労働者が行っていた。奴隷は収穫のような短期契約の労働ではなく、むしろ灌漑事業のような長期にわたるもの、あるいは牧羊、家事などの専門性を要する仕事に用いられた。

また奴隷の中にも高度な教育を受けたエリート層が存在し、農場の管理者、財務担当者等を務めた。とりわけ重用されたのが宦官で、皇室に直に仕え、帝国の国家予算管理までも担当したという。

残酷な処罰の一方、奴隷には自らを買い取る自由もあった

奴隷の多くは戦争捕虜として入手され、特に国境地域では奴隷売買業が盛んだったようだ。またワインや小麦などと一緒に奴隷貿易も行われた。

売買される際の値段は、一人当たり一般家庭2~3ヶ月の生活費ほど。買い取られた奴隷はちょうど家畜のように育成され、子を産み、奴隷としての家族を形成もした。買われた奴隷より当家で生まれた奴隷のほうが可愛がられたという。

一方で主人には、無能な奴隷、不実な奴隷を罰する権限もあった。処罰の一例は、蜂蜜を裸体に塗りつけた上で木に縛りつけ、虫の餌とするというもの。だが奴隷が合法的に稼いだ金で自身を買い取り、自由人となることもできた。

奴隷は古代のスマートフォン

ローマ帝国での奴隷は、今日のスマートフォンやタブレット・コンピュータのようなものでした」とエルム氏は、こうした奴隷の実態を現代の電子機器に喩える。

「iPhoneは売買できます。ですがその品に今日多くの人は感情的というか、性愛的なつながりを結びます。私の学生の多くは、おそらく恋人より頻繁にiPhoneを撫でまわしているでしょう。壊れれば悲しみ、途方に暮れもします。ですがそれはもちろん主体ではなく、物なのです。ローマ時代の奴隷もそのようなものでした。<声を持った物品>だったのです」。

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Text by 宮城保之

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