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ドイツの小学校を悩ませる「ヘリコプターペアレント」

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日本に「モンスターペアレント」がいるように、欧米には「ヘリコプターペアレント」が存在する。わが子の周りをヘリコプター部隊のごとく旋回し監視、何かあると即座に駆けつけ介入してくる保護者のことだ。そんなヘリコプターペアレントへの抗議としてドイツの小学校校長が生徒の父母に送った陳状の手紙が地元の新聞で取り上げられ、注目を集めている。

「ヘリコプターペアレント」の目に余る素行に、ドイツ小学校長が苦情の書簡

ドイツ・シュトゥットガルト最古の都市区バート・カンシュタットにある小学校でのこと。校長のラルフ・ヘルマン氏が生徒の父母に、彼らの素行についての苦情を記した手紙を書き送った。

苦情の内容はこうだ。多くの親がわが子を車で学校に送り迎えし、校門前に邪魔な駐車をする。子どものランドセルを降ろし教室まで持ち運んでやる。上着を脱がせ上履きを履かせてやる。授業開始時間が過ぎているのに担任に話しかける。さらに授業開始後も廊下で父母同士おしゃべりをする。窓越しに我が子にウインク。息子のトイレにパパが付き添う。よその子に小言を言う。

問題となっているのは1~3年生の父母で、人数にして50人ほど。学校側はすでに子どもたちの徒歩登校を父母側に促すなど対応をしてきたが実情が変わらないということで、意を決した校長が抗議の手紙をしたためることとなった。

多方から激励と賞賛、だが校長はあくまで父母との協働解決を望む

この件が地元新聞に取り上げられるや、学校には全国のマスコミによる問い合わせ、激励のメールが殺到。他の学校の教師からも同意と賞賛の声が挙がった。地元警察が1年生の集団登校への付き添いを提案するなど、支援の申し出も少なくない様子。

こうした反応は「私たちが傷口に触れてしまったことの確証」と校長は言う。だが校長が望むのはあくまで学校と保護者との良好な協力関係。手紙の本意も外部からの支援を求めることではなく、教育者として父母の目を開かせることにある。平穏な学校生活と関係者との協働を守るため、マスコミによる盛んなインタビューの申し出も断っているという。

ヘリコプターペアレントはもはや国家問題、父母会は宗教裁判

ドイツでの「ヘリコプターペアレント」問題がこの小学校の特殊事例ではないことは周囲の反応からも明らかだ。息子のラテン語の宿題を手伝うためママが語学学校に通い、娘の作文をパパが書く、といった事態も全国で珍しくないという。問題の大元にはわが子可愛さのみならず、学校への不審の念がある。

成績が優れなかった生徒に「もっとがんばろう」とのコメントを贈ったら、次の朝にはもう親がやってきて教師を問い詰める。さらに「ヘリコプターペアレントが力を合わせると恐ろしいことになります」とドイツ教師協会代表で『ヘリコプターペアレンツ』の著書もあるヨーゼフ・クラウス氏は述べる。「父母会は陳情団体の集会、宗教裁判のようなありさまになってしまうのです」。

解決策の一つは、保護者用校内ルール設定

ヘリコプターペアレントの素行は教育現場の妨げとなるだけでなく、子どもたちの学習意欲、自立心も奪うことになってしまう、というのが多くの識者の見解だ。その問題解決には学校と保護者との信頼・協働関係の確立が欠かせない。

学校側が提起する具体的な解決策の一例は、保護者側との合意による校内ルール設定。例えば校内に父母立ち入り区域を明示する。わが子をクラスに送り出す「キス・アンド・ゴー・ゾーン」を設置する。教職員は名札を付け、名札無しの大人を見かけたら何の用事かと話しかけるようにする。スクールカウンセリングなど話し合いの場を増やす。

どちらが子どもだか分からなくなってしまうような規則の数々だが、実際にそれで事態を緩和できた学校もあるということだ。

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