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ミシュランにも掲載!“道が廊下、旅館はお部屋”という理念を掲げる黒川温泉の過去、震災後、これから【IRORIO熊本特集第3弾】

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楽しい気分になるために温泉街に行ったのに、寂れた温泉街を見て旅行先でなんとも言えない気分になったり、客引きの激しさに引いてしまったということないだろうか?

インバウンドで盛り上がりを見せている観光地がある一方、過疎化などで勢いを失ってしまっている温泉街が全国に存在する。

熊本県にある「黒川温泉」はレジャーブームが去った70年代に衰退が始まったが、85年頃から旅館組合が中心となり「道が廊下、旅館はお部屋」という共存共栄のコンセプトを掲げ復活を遂げた温泉旅館街。

ミシュランからも評価を受けるなどして、順調に観光客を増やしていたが、去年の熊本地震で思わぬ風評被害を受けた。

私やったー麺は熊本の今を取材するため、2016年6月から7月にかけてジモコロが主催した黒川温泉で行われた熊本震災支援イベントに参加した。IRORIO熊本特集第3弾として黒川温泉青年部の代表北里有紀さんにお話を聞いてみた。

1985年が転機

黒川温泉が今のように変わる前の1985年、どの旅館もお客さんを呼び込むためにお店の前に看板を置き、お客さんを奪い合っているような状態だったという。北里さんは当時の様子を「以前までは旅館組合というのは名ばかりの組織だったが、このあたりが転機となり全体が共生して黒川温泉をよりよくしていこうという空気が出来上がった」という。

後に「道が廊下、旅館はお部屋」というコンセプトも出来上がり、一つの旅館だけでなく様々な旅館を楽しめる入湯手形も用意された。

24老人会による手形製作 (1)

この入湯手形を作っているのは地域に住む老人会。この手形の作成に対して給料が出ており、役立っているという。

この仕組みについても「入湯手形の存在は、この30年の黒川づくりの原動力とも言えます。この売り上げにより組合の事業を幅広く行うことができるようになり、自主財源ができるようになりました。月に一度の八日会(全体会)で判断し取り組んだことにより、スピード感のある決裁も可能になりましたね」とのこと。

「この取り組みはお客さんの支持を集め、各旅館ごと、自然の立地を活かした露天風呂の整備により、当時の秘湯ブームに乗ることができました。7年前からは、9分類の内7種類を有する多泉質の特性をうたい、商品の磨き上げに取り組んでいます。30年前に入湯手形・露天風呂めぐりによって地域ビジョンが出来、それが後の”黒川一旅館”という言葉に繋がっていきました。自館でお客様の囲い込みをせずに、温泉街を回っていただき、地域全体の魅力の底上げにつながったと思っています」と北里さんは語る。

取り組みを通して、黒川温泉は順調に発展を遂げ、2009年にミシュラン・ジャポンで2つ星を獲得するなど、幅広い支持を得ていた。

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想像以上の風評被害

温泉街一体としての評価が高まるさなか、熊本地震が発生する。黒川温泉にある旅館のうちのいくつかは、地震の影響を受け休業を強いられた。

熊本市内から黒川温泉にむかう一部の道が封鎖になってしまったり、旅行の自粛ムードが漂い黒川温泉にお客さんがほとんどこないような状況が続いたという。

去年のゴールデンウィ―クは、予約の多くがキャンセルとなり、一部の旅館は経営が傾きかけるような状態だったそうだ。国や県の震災時の金融支援や労務で雇用調整を行ったり、保険の支援を受けるなど厳しい時間を過ごしたという。

当時の心境を北里さんは「商いというものは、始めたからには潰れることがあるんだということを実感し、逆にこれまでの環境が大変有難いものだったと改めて感謝致しました」と語る。

経営者としては「決断し、前に進むしかない」と考え、「宿の歴史、スタッフの雇用、地域の発展、様々な責任を背負っているんだと再確認した」という。

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転機はイベント&九州ふっこう割

転機の一つなったのは熊本震災支援イベント。黒川温泉に100人のライターを集めて、自腹でお金を落として、情報発信をするというもの。

発案者の徳谷柿次郎氏によると「今回のイベントは友人で今回の共同主催者の田村祥宏氏から黒川温泉をすすめられ、そんな矢先に熊本地震が発生し、居ても立っても居られなくなり熊本取材を計画し、その中で北里さんや南小国町長の高橋周二さんと出会い、イベントを提案した」そうだ。

周りの仲間がイベントに集まり、情報を発信した結果、多くの人が集まりネット上で大きな反響があった。また、このイベントの直前に国の給付金を使った「九州ふっこう割」が発表になり、黒川温泉のFAXも電話も鳴りやまない状況になったそうだ。

2017年4月現在、鉄道や道路も止まっているが、最悪の状態を脱したという。

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黒川温泉のこれから

九州ふっこう割の実施などもあり、旅館は徐々に客足を取り戻しているという。九州全体に観光自粛のムードが流れていたが、そういった空気もなくなり、お客さんが戻り始めているそうだ。特に去年の7月度は福岡県からの観光客が多かったとのこと。

今後について北里さんに聞いてみると「今まで“道が廊下、旅館はお部屋”というとらえ方で黒川温泉の観光を盛り上げてきましたが、今度は九州を面ととらえ、別府や湯布院など件を超えて周辺観光地と連携し盛り上げていきたいと考えています」とのことだ。

さらに北里さんは「県だけでなく、国を超え様々なアイデアが黒川温泉に入ってくるようなシステムを構築していきたいと考えています。ぜひ黒川に力を貸して頂ければと考えております」とのことだ。

地震を乗り越え、さらにパワーアップした今後の黒川温泉に期待したい。

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